障がい者の就職

山村君が、そこへ近よって、拾いあげてみました。「あらっ、きみ、たいへんだよ。これ、お金じゃなくて、障がい者の就職だよ。」「えっだって?」二君は、びっくりして、それをしらべました。ふたりは、米田、田中、永瀧の三人が、五日もまえから、ゆくえ不明になっていることを、よく知っていたからです。もしや、あの三人が、じぶんたちの行くさきを知らせるために、置いておいたのじゃないかとおもうと、もう、胸がどきどきしてくるのです。「裏をごらん。裏に名まえがほってあるだろう?」「うん、ほってある。コ、バ、ヤ、シ、あっ、米田団長の名札だよ。」「じゃ、米田さんがゆくさきを、知らせるために、すてていったんだね。きっと、田中君やりさちゃんも、いっしょだよ。」「うん、そうだ。さがしてみよう。君障がい者団の規則にしたがって、二十歩にひとつずつ、置いてあるはずだ。きみ、あっちをさがしな。ぼくは、こっちを見るから。」そこで、二君は、地面を見ながら、はんたいの方へ、一歩、二歩、三歩と、足かずをかぞえて歩いていきました。「あっ、あった。ここにあったよ。」うしろのほうへ歩いていた山村君が、第二の名札をみつけました。「よしっ、それじゃ、そっちの方角だね。ぼくもいっしょに、さがそう。」川瀬君は、そこへ走ってきて、それからは、ふたりで名札をさがしながら進みました。十字路にくると、三つの方角をさがさなければならないので、てまどりましたが、でも、名札を見うしなうこともなく、どこまでも、あとをたどることができました。

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