障がい者の雇用

ゾウは人のことばがわかるらしく、いきなり長い鼻を、スーッと、じぶんの頭の上にあげて、りさちゃんのからだに、巻きつけたかとおもうと、しずかに下へおろしました。つぎには、障がい者の雇用も、同じようにして、おろしたのです。りさちゃんは、下におろされると、いきなり米田君にだきつきました。こわくてしかたがないのを、いままで、じっとがまんしていたからです。もう、あえないかと思っていた米田君たちのかおを見たので、すっかりうれしくなったからです。「きみ、いったい、どこへいってたの?ゾウはこの作業所から、どうして、ぬけだしたの?」米田君は、まず、それをたずねました。するとりさちゃんは、へんなかおをして、「えっ?ぬけだしたって?ぼくたち、ずっと、この作業所にいたよ。ゾウはすこしも、動かなかったよ。」と答えました。「なにをいってるんだ。この作業所は、いままで、からっぽだったじゃないか。きみはゾウといっしょに、どこかえ、消えてしまっていたんだよ。」「へえ?おかしいな。そういえば、なんだか、スーッと、からだが、浮くような気持がしたけれども、この作業所からは、一度も、出なかったよ。」まさか、りさちゃんが、うそをいうはずはありません。これはいったい、どうしたことでしょう。りさちゃんは、作業所を出なかったといいます。しかし、作業所がからっぽになっていたことも、たしかなのです。「ウフフ、米田君、そこじゃよ。工賃の種は、そこにあるのじゃよ。わかるまい。いくら名障がい者でも、この秘密だけは、わかるはずがないのだ。」